だが、ここで疑問が生じる。死後何年間も経ってなお生きていたというなら確かに現代の知識をもって
しても脅威以外の何者でもないのだが、何日というなら、それは仮死状態に陥った病人がそのまま医学
知識の未熟により家人に死亡と断定され埋葬された後に息を吹き返し蘇ったのではないのかという仮定
が出き、そう考えれば説明がつく。
蘇った「死者」はまずそこから出ようと試み、棺の蓋を開けようとする。
もちろん、それは釘などで充分に封印されているので常人の力で開けられるものではない。仕方なく、
中から棺を叩き助けを呼ぶが、いかんせん土中では村人の元に声が届くはずも無く、また届いたとしても
極めて気味の悪い思いをさせるのみで墓を掘り返すことはないだろう。
そうこうするうち、中の死者は、
今度こそ本当の死の危険が迫ってくる事に気付き、半狂乱になるはずだ。まず考える事は食糧の確保
だが、周りにはなにも埋まっておらず、密室の為生物もはいってこない。ならば、もっとも可能性の高い
ものは自分の衣服を食べる事である。
実際、現代でもトンネル工事で落盤が起き、生き埋めになった作
業員が自分のTシャツを齧って飢えをしのぎ、救出されたというはなしも聞いた事が有る。次に、といって
もほとんど最後の手段に近いものだが、自分の肉体を食糧とするのだ。そのときの間違えられた死者の
気持ちはいかなるものだっただろう。