ガラスの仮面(2)ネタバレ?

さて、先のページではやや小難しい事を書いたりしたが、要は僕は只のファンなんだ。ミーハーなんだ。マヤちゃんがんばれ!なのだ。よってここからはいちファンのヨタ話であるので、「私の『ガラかめ』を汚さないで!!」と思われる方はしばしご遠慮くださいね。

何が言いたいって、僕は芸能界編が嫌いだ。

本当に非の打ち所がないこの作品において、唯一読む時に抵抗を感じる(というより通常は読み飛ばす)ところが、芸能界編なんだ。
具体的にどうなっちゃうかというと、「奇跡の人」劇中で偉人へレン・ケラーを演じたマヤは、演技において完璧だといわれる亜弓をさしおいてアカデミー芸術祭演劇部門助演女優賞の最有力候補にノミネートされる。その後にその功績が奏し大河ドラマにてテレビデビュー。いよいよ女優北島マヤが全国にはばたいて…、
と思いきや、思わぬ障害がマヤを待つ。彼女は演劇の役になりきる自己催眠的な役作りのしかたをするので、分刻みの、順不同の撮影をするテレビ界では思った演技を出来ず、共演者からは嫉妬の嫌がらせを受け、過去の同じ劇団の仲間達からは芸能プロの暗躍もあって確執が生まれ遠ざけられてしまう。
おまけにライバルの姫川亜弓は恋愛の勉強をすると言う目的で適当に選んだそこいらの男を恋愛の雛形として選ぶ始末・・・!作者も、この一連の流れではマヤに徹底的にサディスティックになろうとでも思ったのか母親まで死なせてしまうと言う恐るべき不幸さだ。

それに、なんといってもファンとして我慢ならないのが先の亜弓の恋愛話しに並行して進む、マヤちゃん自身の恋愛ストーリー。それまで友達と恋人と微妙なせんを辿っていた桜小路君をすっぱり忘れて(彼の谷より深い苦悩はまるっと気付かず)、ぽっと出の二枚目スターと恋に落ちてしまう。一読する限りでは、マヤちゃんが幸せになるならいいか・・・、と謙虚に受け止めていたのだが、恋の結末を知った二回目以降は、後に迫る不幸を知らず、ほのかな恋を楽しむ純真なマヤの姿は痛々しいだけである。しまいにはそのスター、里見君のファンのすけばんにまで狙われる始末。しかも、これでもかと言わんばかりにマヤは映画演劇すべてにおいてスキャンダルの清算と言う形で失脚させられてしまうのだ。たった一人の、マヤを標的にした無名の女優に。

この「ガラスの仮面」は、基本的に勧善懲悪であって、いくら舞台の上で共演者が意地悪をしても、マヤは正攻法でいつもくぐりぬけてくるのだが、芸能界編では姿の見えない敵にいらいらするし、おまけに失脚後は悲惨な運命が待っている。その敵の女優にはライバル亜弓がちゃあんと仕返しを正攻法でしてくれる(仇はとったわと本人はいっている)ので爽快ではあるのだが、本人が見返せない唯一の場面であるのも確かだ。

まあ、そういった厭な場面があるからこそそこから立ち上がってくるマヤに感動を覚えるんだし、亜弓との表面には表れない友情と言うものもこの頃から出来てくる。相変わらずマヤちゃんは気付いてないけど。
そこで受けたトラウマは後の演技に幅を持たせた、みたいな感じになってはいるが、本当は失敗だったんじゃ?などとも思ってしまう。だって、その後はテレビに出てたってはなしはチラッとも出てこなくなるんだものなあ。おまけに先の里見君も。桜小路君に罵倒されてなんか暗い顔して以上!終わりである。当の桜小路君たって言う程誠実じゃあないと思うのだが(同性の視点)。

なんだかんだ言っても、マヤちゃんはめでたく不死鳥の様に返り咲くワケだからいいんですよ。

とにかく、遊園地に行って「マイナス30度の世界」という寒いだけのアトラクションに入れば「オストリア!私の国!」と言いたくなり(「ふたりの王女」稽古より)、ウィノナ・ライダーの「若草物語」をみればベスばかり目が行くし、ゲーム「ロマンシング・サガ2」でコッペリアという人形がでてくれば「愛しのオランピア!」と叫んでしまうし(高校演劇部に客演)、井の頭公園に行けばダッタン人の矢よりも早く飛んでいきたくなるし(劇団「一角獣」との共演「真夏の夜の夢」にでてきた野外劇場はここだろう)、TVで芸人さんがしらけると頭の中では「失恋レストラン」がかかってしまう(「ふたりの王女」オーディション中、マヤの演技に圧倒された競争相手が力余ってこれを唄い大失敗、恥をかく)。

私がそれくらい毒されてしまうほどの影響力をもっているのだ、 この「少女マンガ」は。

私の好きな高橋源一郎と言う小説家が、「ペンギン村に陽は落ちて」のなかで「いつか同時代カンガルーになる日まで」というオマージュ小説を書いている。
「同時代カンガルー」を演じるマヤと亜弓という内容のこれはこの作家らしいものすごくアバンギャルドな作品であるが、それでもその本の中では一番原作に近いし、他のオマージュがまじっていない。
とはいえ、その肝心の「同時代カンガルー」が最後まで読んでもさっぱり判らないという、きわめておもしろうものである。

彼は少女マンガを純文学の末裔と評価するほどの人なので、 エッセイのなかにも、「ガラスの仮面」の記述が見られ、とても興味深い。
どちらかといえば、こちらの方が先に出会っていたりして、その中に出てくる「北斗の拳」や「キン肉マン」は知っていても「ガラかめ」だけは知らないので小説一本まるまる理解できないという。ゆえに、気にはなっていたし、
大学が女子ばかりだった事もあって夜中になるとそのパロディな話題で盛り上がっていた。丁度僕らの年代の男子が「北斗の拳」「キン肉マン」をからかって盛り上がるのと同じ。でもその話題についてゆけず悔しい気はしていたのだがなかなか読む気になれず今思うと損したなあ、なんてね。

マヤを陰ながら応援する「紫のバラのひと」や初対面から想い続けている桜小路君などのからみも気にはなるけれど、現在は連載したり休んだりが多いので、それがまず心配。

そして何と言っても紅天女は誰が演じるのか?最初は憎いだけのキャラだった亜弓さんも実は密かにいい人だったりして、亜弓さんにも紅天女をやらせてあげたいと思いつつ、でもそしたらマヤが頑張ってきた意味がまるでないかなあー?と思ったり。
マヤにも亜弓さんにも幸せになってほしい、というのはファンのわがままな願いなのだろうか??とりあえず作者が生きてるうちに完結してほしいなあ。

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