閑話休題(1)〜作者と吸血鬼との出会い〜


  してみると、わたしがいつ吸血鬼に興味を持ったのか、というのは定かではない。 
  おそらくかなり小さい頃から水木しげるものに興味はあったのでそのあたりが原点ではないかと思うのだが。

  もちろん、日本の妖怪にも興味はあったが、特に西洋の妖怪に惹かれていた。
  日本の妖怪と言うものは、どこかしら愛嬌と言うものがあるのだが、西洋には まったくそれがない(もちろんそれだけではない、その当時一般にあったのは 西洋の怪奇映画からの影響からゆえである)。
  よって、そこに圧倒的な悪を 見出したのかもしれない。

  そういえば、「妖怪大戦争」とかそんな映画を 子供の頃に見たが、それは西洋から江戸に吸血鬼がやってくる。それが あまりにも強力な為、日本の妖怪が一致団結して退治すると言うような話では なかったか。子供にも人気な油すましやかっぱが苦戦するのを見て頑張れと 思うより先に西洋の妖怪ってのは強力なんだなあと思っていたはずだ。 
  案外とそこいらが吸血鬼に憧れる原因かもしれない。それにしてもなんとも かわいげの無い子供ではある。

  小学校に入ると、興味がパソコンに移る。当時ファミコンなんてすばらしいもの はなかったので、インベーダーやブロック崩しが家庭であそべるとは、 なんて素晴らしいものなんだろうと思った。
  わたしの頭の中ではコンピューターというと オープンリールで記録は紙に穴を打ち付けるものだと思っていたので、 磁気カセットテープを使っているのを見て大層衝撃を受けたのを覚えている。
  しばらくすると、アメリカではロールプレイングゲームというものが流行っていると 言う情報が入ってきた。「ウイザードリィ」の国産版が出るかでないかという 頃だから、RPGといえばD&D。国内の主流はアクションとアドベンチャーだった から、それに対する興味はすごかった。雑誌の紹介に載っていた文章を今も 覚えている。「AVGは一歩右にすすんだら落とし穴に落ちて死んでしまうが、 RPGではその前に調査をする事ができる。RPGとはそういうプレイヤーの自由な発想を もとに行動できるゲームなのだ。」
  たしかこんな内容だったと思う。 今のプレイヤーが聞いたら怒りそうだが、その時点ではそんな認識だった。 そうしていくうち、RPGに出てくるモンスターから英和辞典を活用する ようになり、アドベンチャーゲームブックを経てファンタジーの世界に はまってゆく。吸血鬼を1モンスターとして考えるようになったのはこの頃だろう。

  中学生。RPGがドラゴンクエストの発売により日本で加速度的に認知され始める。 自然、源流であるウイザードリィやウルティマなんかにもスポットが当たって、 ウイザードリィがファミコンで移植され、初プレイ。ここで初めてこれは ヴァンパイアだと思えるモンスター、「ヴァンパイア・ロード」に会っている。 

  高校生。映画部だったわたしは、映画好きの知人に囲まれ、急速に知識を吸収していった。 本格的に吸血鬼に興味が湧き、初めて見た吸血鬼映画がC.リイの「吸血の デアボリカ」だった。でも今考えると、ビデオやが怪しい所だったので、内容は 「カウント・ドラキュラ」だったような気もする。
  とにかくその映画をみて いっぱしのドラキュラ通になった気でいたが、しばらくして念願のハマー作T. フィッシャー監督の「吸血鬼ドラキュラ」がテレビで放映される。
  これは衝撃的だった。 うまく言えないが、オリジナルの凄み、といったものが感じられた。 いまでは使い古されていて恥ずかしくて吸血鬼ものをまっとうにできない、だから 新しいファクターや新解釈を付け加えよう、などといったチープな羞恥などから 無関係なオリジナル、というものはやはり強烈な印象を観たものに与える。 
  同時期に菊池秀行の有名シリーズ「吸血鬼ハンター「D」」を読む。その頃 まったく本を読まなかったわたしは(すっかり家庭用ゲームに心酔していた。RPGの 黄金時代でもある)、さすがに危機感を感じて活字へのリハビリを始めた。 たまたま手に取ったのがそれで、内容も以前ビデオを見て知っているし、 テーマも好きな吸血鬼と言う事ですっかり読破してしまった。
  そこで気になるのが 菊池秀行記す所のあとがき。かならず映画を「…を観ながら」と締めるのだが、 「D」のシリーズではすべて吸血鬼。吸血鬼マニアのはしくれと信じ込んで いたわたしは無性に興味をそそられ、「魔人ドラキュラ」はじめとする、 様々な映画の探索と言う、長い長い旅を始めたのだ。

  大学時代。すっかり吸血鬼が自分の中に根づいたわたしは仮装大会でドラキュラ をやったりと浮かれていたのだが、学内の本屋で興味深いタイトルを見つける。 

  書名は「吸血鬼幻想」。

  それからのおよそ七年間は、あの書を手に取った時からさほど変わっていない。 それほどわたしにとっては原初の衝撃だったのだ。
  今回、HPを(正しくはWeb サイト?)開設するにあたり、テーマを色々考えた。吸血鬼も候補には挙がったが 優先順位は低い。わたしの知識など、所詮テレビのドラキュラ特集ほども精密で ないと考えていたからである。
  ネット上にも吸血鬼を扱ったものは多い。 そんな中で半端なものを作りたくはない、というのが正直な気持ちで、 それは今も変わらず、果たしてこれで良いのかと迷いもする。
  しかし、 書いていくうちに自分ではこれ以外にここまで作る事は出来なかっただろうと 実感。やはり自分にとってもっとも興味のあるテーマと言えば吸血鬼なのだろう。

  これはしばらく、少なくともこのサイトが存在している間は変わらないことなのだろう。 


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